私は人を殺したことがあります「ある殺人犯の手記」 #4

歴史
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ここからが大変でした。
ひとが通らないとはいえ、いまはまだ昼間です。
周囲に気をつけながら、自分は右手を伸ばしたまま固まっている店長の遺体を後部座席から引きずり出しました。
足の方を持って、力いっぱい引っ張ると、ずるずると、遺体が動きました。
顔は見たくなかったので、かけた上着はそのままにしながら。
ずるずる、ずるずる、と遺体は車の外に段々と出てきましたが、支える者のない頭部が鈍い音を立てて車体のへりにぶつかって地面に落ちました。
その拍子に上着がずれて、店長の顔が除きました。
光を失った瞳がまっすぐに虚空を見つめていました。
傷口の穴に詰めたおしぼりが黒っぽく変色していて、一見すると何だかわからない黒いかたまりになっていました。
切れた首の部分から、頭が変な方向に向いています。

まっすぐに虚空を…。



考えてみればおかしなことでした。後部座席に寝ていたときの店長の目は、確かに横目に自分を見ているような角度だったはずです。
それがいま、正面からびっくりしたような大きな目を見開いてまっすぐ前を見ています。でも確かに、さっきまでは―――

自分は、考えるのをやめました。

とにかく、これを捨ててしまいさえすれば…。
そう思い直して、自分は上着をもう一度店長の顔にかけて、絶対に顔が見えることのないようにしました。
ぐるりと周囲を確認して…、だれもいない。自分は深呼吸をしてから、一気に堤防の上まで遺体を引きずり上げようとしました。
何度か足がもつれましたが、どうにか引き上げました。

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Source: 不思議.NET

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