→光子が無くても量子テレポーテーションが可能だと実証された
昨年、科学者たちは離れた光子同士がコンピュータチップ上で情報送信できることを確認しました。これは量子テレポーテーションとして知られている作用です。
そして現在の新しい研究によると、光子に続き、電子間の量子テレポーテーションも可能かもしれません。
米国ロンチェスター大学の物理学部のジョン・ニコル助教ら研究チームは、電子のペアを分散させ、それらのスピン状態をテレポートさせることに成功したのです。
これは量子コンピュータを改善するための重要なステップとなるでしょう。
■量子テレポーテーションとは
量子とは、物質を作る非常に小さな粒子のことです。
そして、この量子の中には、電流をつくる電子や光をつくる光子などの様々な種類があります。
さてこの量子たちは一般的に知られている物理現象とは異なった働きをします。
例えば、1つの光子を分裂させることで、2つで1セットの双子の光子を作り出せます。
この双子光子は離れていても「瞬時に情報が伝わる」という特性を有しており、この仕組みは量子テレポーテーションと呼ばれています。
量子テレポーテーションは実際の物質を瞬間移動させることはできませんが、量子の状態を瞬間移動させることができるのです。
■量子コンピュータへの利用
この量子テレポーテーションは、量子コンピューティングで情報を送信するための重要な手段です。
従来のコンピュータはビットと呼ばれる「0か1」の最小単位情報で構成されています。
対して量子コンピュータは量子ビットを採用しており、同時に「0」と「1」の両方の情報を保持できます。
そのため、量子コンピュータは従来のコンピュータよりも強力な情報処理性能を持つのです。
さて、科学者たちは以前の研究で、光子テレポーテーションによって量子ビット情報を転送することに成功しました。
しかし、科学者たちが目指すところは、電子から作られた量子ビット情報を転送することです。
なぜなら、電子は互いに容易に相互作用し、半導体にも利用可能だからです。半導体をベースとする量子コンピュータは既存の技術とも相性が良いため、大規模量子コンピュータに適しています。
それで科学者たちは電子テレポーテーションの方法を探ってきたのです。
■量子スピンのテレポーテーション
電子を使った量子テレポーテーションを実証するために、研究者たちはハイゼンベルグ交換相互作用の原理に基づいて最近開発された技術を利用しました。
個々の電子はS極とN極をもつ棒磁石のようです。この極の方向は「量子スピン」状態とも呼ばれます。
そして特定の種類の粒子が同じ量子スピン状態を持っている場合、同じ場所に存在できないという性質があります。
つまり、同じ量子状態の電子は互いに重なり合って存在できないのです。そのため電子の状態は前後で逆のスピンになるように入れ替わります。
研究者たちはこの手法を使用して電子ペアを分散させ、スピン状態をテレポートさせることに成功したのです。
ニコル氏は「私たちの仕事は、光子無しでも量子テレポーテーションが実行できることを示しています」と述べています。
この結果は、光子だけでなく、すべての物質のスピン状態を含む量子テレポーテーションに関する将来の研究への道を開くことでしょう。
また、半導体量子ビットの有用性と可能性を示すものとなりました。
この研究は6月15日、「Nature Communications」に掲載されました。
Conditional teleportation of quantum-dot spin states
https://www.nature.com/articles/s41467-020-16745-0
引用元: ・https://egg.5ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1592821896/
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Source: 不思議.NET
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