これまで私たちは、「宇宙は全方位に向かって均質であり、宇宙のどこでも物理定数は不変」だと考えてきました。
ですが近年の度重なる天文学的な測定により、この宇宙を規定するはずの物理定数が、宇宙の異なる場所では違っていることを示唆する結果がもたらされています。
そこで研究者は決定的な結論を得るために、銀河の様々な地点に存在する、クエーサー(非常に活動的なブラックホール)から発せられる電磁波を観測し、宇宙各地の電磁気力の強さを決める定数(微細構造定数)を測定しました。
結果は驚くべきもので、宇宙の一方では電磁気力が強く、また逆の方向では電磁気力が弱くなっていたのです。
これは単に宇宙に方向性があるということだけを意味するものではありません。
電磁気力は原子核が電子を引き留める力です。これが宇宙の場所によって異なるということは、同じ水素や酸素であっても、宇宙の端(高電磁気区域)と端(低電磁気区域)では別の性質を持つことを意味します。
また電磁気力が異なれば、化学反応も異なり、惑星上で生命が産まれる可能性に大きな影響を与えます。
もし、私たちの銀河系周辺だけが生物誕生にとって適切な電磁気力の区域である場合、地球外生命体などの調査は近傍以外は絶望的となるでしょう。
しかし、どうして宇宙に方向性が産まれたのでしょうか?
宇宙各地の電磁気力を測定する
電磁気力は宇宙を構成する4つの基本的な力の一つです(他の3つは重力・弱い核力・強い核力です)。
電磁気力は宇宙に存在する全ての原子核と電子の関係を決めており、適切な電磁気力がなければ原子も分子も構成されず、全ての物体は飛び散ってしまいます。
これまでにも、クエーサーの観測から、宇宙の遥か彼方にある領域では電磁気力が地球とは異なるかもしれないという報告があがっていました。
今回の研究ではより包括的な結論を導くために、機械学習を利用して複数の宇宙の領域での電磁気力(微細構造定数)が測定されました。
その結果、私たちの宇宙ではある特定の方向に行けば行くほど電磁気力が強くなり、それとは逆の方向に行けば行くほど電磁気力が弱くなっていることがわかりました。
観測を行った研究者たちは、はじめはこの結果を信じられませんでした。
この結果が意味するのは、宇宙は均一ではなく双極的な性質を持ち、宇宙の異なる場所では異なる物理定数が存在することを意味し、既存の均一な宇宙認識を完全に破壊するからです。
しかし繰り返し検証を行っても、結果はかわらず、データは宇宙の不均一と双極性を示していました。
なぜ宇宙に方向性がうまれたのかは、完全に謎のままです。インフレーションやビックバンの方向が大きく歪んでいた可能性もありますが、推測の域を出ません。
生命は地球の近くにしか存在しないかもしれない
現在の宇宙論は、宇宙の均一性の元に成り立っています。
宇宙が不均一かつ、謎の方向性がある場合、私たちが求める標準理論にも大きな影響があるでしょう。
ですが、影響は単に理論だけに留まりません。
電磁気力、すなわち原子核と電子がお互いを引きあう力が、宇宙の場所によって異なる場合、宇宙の端と端では水の電離といった基本的な化学反応ですら全く異なる可能性もあるのです。
化学反応の基本が違えば、生命活動にも大きな影響があります。
楽観的な予測は「宇宙の端と端では全く異なる生命が生まれている」というものですが、悲観的には「地球と似た電磁気力の区域以外では、生命は誕生しない」ことになります。
今回の発見は物理学と宇宙生物学に劇的な影響を与えることになりそうです。
しかし、人類の科学史を紐解けば、常識の崩壊は常に新理論の芽になってきました。
今回の常識の破壊によって、人類の科学力は新たな飛躍の時を迎えるのかもしれません。
研究内容はオーストラリア、ニューサウスウェールズ大学のマイケル・R・ウィルチンスカ氏らによってまとめられ、4月24日に学術雑誌「Science Advances」に掲載されました。
引用元: ・https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1588090442/
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Source: 不思議.NET
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