このサメは、テンジクザメ科(Hemiscyllium)に属しており、浅瀬や海底、岩肌を歩くことのできる唯一のサメです。同じように陸上で生活する「魚」としてハゼやムツゴロウがいますが、彼らには後ろ足はありません。
カリフォルニア科学アカデミーの研究によると、この歩くサメは、地球上で最も新しいサメの進化系統であることが判明しました。
研究の詳細は、1月21日付けで「Marine and Freshwater Research」に掲載されています。
Walking, swimming or hitching a ride? Phylogenetics and biogeography of the walking shark genus Hemiscyllium
http://www.publish.csiro.au/MF/MF19163
「歩くサメ」になるまでに
研究チームは、歩くサメの起源を解明するため、「分子系統分析」を行いました。
これは、生物が持つタンパク質のアミノ酸配列や遺伝子の塩基配列を解析することで、その生物が辿ってきた進化ルート(系統)を解明する方法です。
テンジクザメ科に属する9種から採取したDNAサンプルを解析した結果、歩くサメのグループは、約900万年前に存在した祖先から派生しており、サメの系統では最も新しい種類であることが判明しました。
人類に置き換えると、大昔のように感じますが、4億年以上の歴史を持つサメにとっては、比較的最近のことです。
マモンツキテンジクザメ/Crdit: ja.wikipedia
歩くサメの登場は、主な生息地であるオーストラリア北岸でかつて起きた地質学的変化の時代と一致します。
オーストラリアが位置する大陸プレートが、その北側の陸地にぶつかったことで、火山噴火や津波を伴う混乱が数百万年にわたり続きました。
同地に住むサメたちは、新たに作られたサンゴ礁の浅瀬に避難することで難を逃れ、同時に浅瀬を歩く能力を手に入れたのです。
陸地への適応能力
歩くサメは、特殊に発達した4つのヒレを巧みに使って、地を這うように移動します。
また、彼らは海中で活発に泳ぐことはなく、生まれた場所のサンゴ礁にへばりついて生きており、どちらかというと「引きこもり」な生物です。
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また歩くサメは、陸地にいると避けられない「酸素問題」にも耐えられるように進化しています。
呼吸数や心拍数を低下させ、脳の活動も緩めることで、最大1時間まで陸地に留まることができるのです。
呼吸がキツくなってきたら、潮溜まりのある場所に移動したり海中へ歩いて戻り始めます。
彼らのヒレは他のサメと比べて軟骨が分離・縮小しており、ヒレの可動域を広げています。
同じように前脚と後ろ足を持つ「魚」は、3億6500万年前の地球に生きていたアカンソステガだけです。
アカンソステガは魚と両生類の両方の特徴を持っていましたが、進化によって両生類となり、その後脊椎動物として初めて陸上にあがりました。
この歩くサメも十分な進化の時間があれば、サメ由来の両生類に進化するかもしれませんね。
しかし現在、すでに3種類のテンジクザメが国際自然保護連合のレッドリスト(絶滅危惧種)に指定されています。
体長は1m近くあるものの、可愛らしい見た目と大人しさから、水族館や個人の需要に応えるために大量に捕獲されているのです。
歩くサメが「何か別のもの」に進化する可能性は、今のところなさそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=ndbw7SQMCcQ
引用元: ・http://egg.5ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1579744533/
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Source: 不思議.NET
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