2020年1月5日(ハワイ時間)、ホノルルで開かれていたアメリカ天文学会で、韓国・延世大学校のYijung Kang博士、Young-Wook Lee(李榮旭)教授らのグループが、超新星の明るさの推定を見直す研究結果を発表しました*1。(李教授の漢字表記は御本人に教えていただきました。) また、論文がアストロフィジカル・ジャーナルに掲載されました*2。
超新星の明るさは、ダークエネルギーなる奇妙な存在の見積りに用いられます。この発表が正しければ、宇宙の69%を占めるというダークエネルギーの根拠が揺らぐ可能性があります。宇宙物理学業界ダークエネルギー界隈(かいわい)に驚きが広がりました。
ダークエネルギーとはいったい何者でしょうか。超新星の明るさがどうしてダークエネルギーと関係するのでしょうか。それがあったりなかったりすると、どんな違いがあるのでしょうか。解説しましょう。
宇宙って実は膨張中?!
この宇宙は膨張していて、この瞬間もどんどん広がっています。このことは、今から100年近く前の1929年にエドウィン・ハッブル(1889-1953)が見つけました。ハッブルは、よその銀河が遠ざかっているのを観測して、「宇宙って実は膨張中?」と気づいたのです。
ハッブルの測定は、当時の世界最大の望遠鏡を用いたものですが、今から見るとかなり誤差があり、現在の測定値と7倍ほども違っていました。宇宙膨張は、よくいえば大胆、悪くいえば乱暴な研究発表によって報告されたのです。
今では常識ですが、宇宙膨張は、宇宙が過去には小さくて高密度だったことを示しているわけで、つまりビッグバンの証拠です。しかし発表当時、ただちに研究者の大勢(たいせい)が、宇宙膨張とビッグバン宇宙論を支持したわけではありません。
「宇宙が膨張してるってことは、宇宙はむかし小さかったんだ」と、世の中が納得するには、ハッブルの発見から20年以上かかりました。宇宙の真理が受け入れられるまでには、時には長い時間がかかります。
アインシュタイン最大のポカ
宇宙の形状や膨張や収縮やこれまでの姿やこれからを議論する学問分野を宇宙論といいます。
少々話がさかのぼりますが、最初の宇宙論研究者はアルベルト・アインシュタイン(1879-1955)です。
アインシュタインは、できたてホヤホヤの一般相対性理論(相対論)が宇宙全体を記述できる物理学理論だと気づいていて、早速宇宙論の計算に取り掛かりました。アインシュタインが相対論を考えつく前は、宇宙全体を取り扱う物理学理論など存在せず、どう計算すればいいのか分かりませんでした。
そしてアインシュタインは自分の計算結果に狼狽(ろうばい)しました。一般相対論の方程式から導かれる、宇宙を表わす解は、どこまでも膨張するものだったり、逆にすぐ潰れてしまったり、どれもこれもろくな解じゃないのです。
この宇宙は未来永劫過去悠久、変わらない姿で存在すると信じていたアインシュタインは、そういうまともな解が見つからないので、苦し紛れに相対論の方程式に定数項を付け加えて発表します。「宇宙項」と呼ばれる定数を加えた方程式は、定常解を持つのです。つまり、未来も過去も変わらない定常宇宙が相対論から導かれるのです。
こうして世界最初の宇宙論の論文が発表されました。1917年のことです。
けれども、アインシュタインと違って定常宇宙に対する信仰なんか持ってない他の研究者は、大はしゃぎで相対論の方程式に取り組んで、膨張したり潰れたりする宇宙解を次から次へと見つけては提案したので、アインシュタインは「あいつら物理を分かってない」と不快を隠せませんでした。
やがて宇宙膨張の事実が明らかになり、この宇宙にあてはまる現実的な解が膨張解であることが確かになりました。そうなるともう宇宙項は必要なくなります。アインシュタインは宇宙項を加えたことを「人生最大のポカ」と言ったと伝えられます*3。(ただし伝えているのは話のうまい愉快なジョージ・ガモフ(1904-1968)なので、このエピソードは真偽を疑う人もいます。)
引用元: ・http://egg.5ch.net/test/read.cgi/scienceplus/1579744751/
続きを読む
Source: 不思議.NET
コメント