水と幽霊
想像してみてほしい。じっとりとした生暖かい風が吹く夜の帰り道、電灯もまばらな住宅街を一人歩いていると、行く手の電柱の下に何かが佇んでいる。近づくにつれてそれは人だ、それも白いワンピースを着た女だと気づく。「なんでこんな時間にこんな場所に?」怖くなって目を伏せ足早にそばを通り抜けようとした時、女の髪から滴った水でアスファルトが濡れているのに気がついた。「――え?今日は雨なんて降ってないぞ」思わず振り返ったその先には――。
このくだりで彼女が「用水路に落ちてスマホをなくして途方に暮れているOL」だとか「ナイトプールで彼氏と喧嘩して髪も乾かさずに帰ってきた女子大生」ということはまずないだろう。幽霊だ。この「水を滴らせる女」という映像イメージが「幽霊」の典型の一つになっているのは90年代末から00年代にかけてのジャパニーズホラーの映画の水の表現からも見て取れる。
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Source: 不思議.NET
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