沖縄県の米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設反対運動を取り上げた昨年1月上旬の2回の放送を審査。辛さんについて「過激で犯罪行為を繰り返す基地反対運動の黒幕」で「参加者に5万円の日当を出している」かのように伝え、真実性の立証もなく、人権侵害に当たると認定した。
また、反対運動に絡めた「朝鮮人はいるわ、中国人はいるわ」「親北派ですから」との出演者のコメントについて、出自による差別を禁じ、人種や民族などに関するものを扱う場合、その感情を尊重しなければならないとする民放連放送基準を引いた上で「必要な配慮を欠いていた」と判断。辛さん側に取材しなかったことをMXが考査で問題にしなかった点と併せ、放送倫理上の問題があるとした。
弁護士である坂井真委員長は「委員会は差別やヘイトスピーチに当たるかを判断する立場にない」としつつ、「名誉毀損の問題にとどめず、民放連放送基準の規定を示して履行を求めたことで、ヘイトスピーチに関わる問題について言えることを言っているつもりだ」と説明した。
番組を巡っては、昨年12月、BPOの放送倫理検証委員会が「重大な放送倫理違反があった」との意見を公表。MXは今年3月1日、番組を同月末で終了すると発表している。
「テロの時代」示された最後の良心
人権侵害を認定した勧告の決定を受け、会見に臨んだ辛さんは開口一番、「民族差別にも触れており、涙が出た。在日やマイノリティーの人権がBPOで語られたことがうれしい。最後の良心。放送人がこれをやっては駄目だと明確に示してくれた」と語った。
改めて「ネット上のデマとヘイトを社会に放ったMXは罪深い」と批判した。放送後、ツイッターに押し寄せる誹謗(ひぼう)中傷だけでなく、脅迫の手紙やメールが届くようになり、街中でののしられるなど具体的な行動を伴う個人攻撃が劇的に増えたといい、身の危険を感じて昨年11月にドイツへ移住したと明かした。
「ドイツへ行って最初に驚いたのはポストを安心して開けられるということ。ネットで拡散されれば具体的な行動に移す人たちが必ず出てくる」と、ヘイトスピーチが野放しのままインターネットを介して被害が増幅される現状の深刻さを語った。
帰国してたのは2月23日に在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部への銃撃テロが起きたから。
「メディアがターゲットを名指しし、それに共感した人がテロ行為に及ぶ。ヘイトからテロへ、時代は確実に移行した。扉を開いたのはMXだ」
出自をひた隠しにし、恐怖に震える在日コリアンの子どもたちが目に浮かぶ。「守ってあげられず、ごめんなさい。でも、日本には良心のある人がまだたくさんいる。もう少し頑張るから絶望しないでと伝えたい」と唇をわななかせた。
弁護団によると、MXには謝罪や番組内容の訂正など名誉回復の措置を求める。制作したDHCグループには番組のネット配信の中止、全国の各地方局には放送中止の申し入れなどを検討する。
「彼らは必死になって私やBPOをたたいてくると思う。言論とメディアを手にするのが彼らの目的だから。どんなひどいことを書かれるのか、と思う」。不安も口にした辛さんはしかし、顔を高く掲げた。「皆さんと一緒に止めたい。言論で止めていきたい。そのきっかけをBPOが与えてくれたことを心から感謝する」
弁護団の一人、神原元弁護士は警告した。
「放送内容はデマであり、悪質な名誉毀損、人権侵害だと確定した。蒸し返す言動が繰り返されるなら、今回の決定に基づき積極的に法的措置を取っていく。デマも脅迫も、今日以降は絶対に許さない」
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Source: おもしろ韓国ニュース速報