韓国の文化に詳しいある外国人の知人と対話をした時、「韓国人には被害者の情緒があるようだ」という言葉を聞いた。気分がよい言葉ではなかった。「長期間にわたり弱小国として生きてきたからだ。あなたのような強大国の国民はよく分からないと思う」とトゲのある言葉を返した。
しかしその指摘は心の片隅に刺さっていた。韓国社会にそのような側面があり、それが必ずしも地政学、政治外交の問題だけではないという点を私も記者をしながら何度か感じた。さらにそのような情緒を作ることに自分も加わってきた。特に事件・事故が生じた時にそうだった。
災難が発生すれば韓国メディアが追う記事の内容には概して2つの方向がある。一つは胸が痛むエピソード。犠牲者のうちに新婚夫婦、就職したばかりの青年、厳しい環境の中で親の世話をしてきた親孝行な息子・娘、一人暮らしの父親がいなかったかどうかを調べる。もう一つは政府機関の無能な対処だ。対応が遅くなかったか、関連規定をすべて守ったか、規定に問題はなかったかを調査して強く批判する。
もちろん両方ともメディアが扱うべき内容だ。韓国政府が数十年間にわたり弱者を保護する任務を正しく遂行できなかったという事実も確かだ(もしかするとその歴史は数百年、数千年にのぼるかもしれない)。しかし悲劇を毎回「権力者の過ちで罪のない人々がまた犠牲になった」という形で見せようとすることに抵抗感を抱いた。深く考えずあまりにも慣性的であり社会の不信を助長するアプローチではないかと感じた。
同じ状況で米国メディアが見せる態度と比較すると、そのような特徴があまりにも目立つ。米国メディアは「英雄づくり」に没頭するようだ。現場の警察官や消防署員、通行人、または犠牲者のうち、他の人より少しでも勇敢な行動をした人を見つけて集中的に取り上げる。これも少し大げさであり、社会的な副作用を招きかねない報道形態だ。ただ、そのようなニュースの読者や視聴者は「私も同じような状況に直面すれば勇気を持って率先しなければいけない」という気になる可能性がある。
ところが韓国メディアのそのような態度は韓国的な情緒の原因であり結果でもある。報道機関も企業であるため人々が求めるものを見つけようとする。すなわち報道機関と読者・視聴者がますます強度が強まるフィードバックをやり取りするということだ。
>>2以降につづく
http://japanese.joins.com/article/638/240638.html
http://japanese.joins.com/article/639/240639.html
多くの韓国人が日常で不当に自分の権利が侵害された経験を抱えて暮らしている。法と制度が徹底されず、それを運用する人たちは不親切だ。そのような不条理がさらに不公平に適用される。強者は避けて通り、弱者だけに厳格だ。そのような時にわめいて、そして他の人々が注目すれば、問題が突然解決したりもする。法規に規定された当然の代償さえも泣き叫んでこそ受けることができたり、逆に不可能なことも泣き叫べば可能になったりもする。
このため誰もが声を高める。声を高めていない多くの時間には何かを失っている、声が高めた他の誰かに奪われていると考えるようになる。いつも何か損をしているという気がする。自分が経験した小さな悔しさがそのようにいくつかの段階を経て、社会全体に対する根本的な不信に、さらには復しゅう心に発展する。これは韓国の政治外交とはいかなる関係もないことだ。
被害者の情緒を刺激すれば公憤が起こる。この力は火と同じだ。矛盾と不条理を燃やしてなくすエネルギーにもなるが、とんでもないところに広がったりもする。官僚はひとまず火から消そうと考える。事件・事故が発生すればすぐに特別対策会議が開かれる。
特段の対策をどうやって数日間で出すのか。発表の内容を見ると、過去に議論したが無理だと判断して棄却したアイデアが多数含まれている。それを制度にして強制すれば新たな矛盾、不条理となる。そこに不満が抱いた人たちは過去の事故の犠牲者を恨み、その当時の悲しみと正当な怒りまでも毀損しようとする。
このような悪循環はすべての部分を同時に変えるしかない。何よりも日常で悔しい思いをすることがないようにしなければいけない。権力者は小さな批判に耳を傾ける必要がある。「慣行」として済ませるべきではない。不満が爆発する前に自ら修繕する社会システムを構築するのがよい。難しい注文ではあるが、その一方で政府は大衆の怒りの前でも軸が揺れてはいけない。今日の例外が翌日すぐに慣行になり、その翌日には積弊となる。
市民の使命もある。日常の不条理をその都度指摘して告発するものの、暴力的な興奮や小さな集団の確証バイアスとは距離を置いて沈着な行動を取ることだ。メディアに要求されることも全く変わらない。
チャン・カンミョン/小説家
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Source: おもしろ韓国ニュース速報