「金正恩は核を放棄しないだろう」という論理で、絶えず朝米交渉を揺さぶるソウルとワシントンの強硬派の見解は公正でない。北朝鮮の真正性同様に米国の体制の安全保証の約束もまた完全でないことを理解するならば、双方が一定のリスクを甘受して交渉を推進することに反対する名分はない。
30日、ほとんどすべての新聞・放送で報道された「アメリカの声」(VOA)記事の結論は一文に要約できる。「北朝鮮は決して非核化しないだろう」。米国の朝鮮半島専門家30人を対象にアンケート調査をしたところ、回答者の大多数が「北朝鮮の非核化意志は信じられず、交渉を通じて非核化を成し遂げることは難しい」と答えたという内容だ。事実、このような展望は目新しいものではない。米国のみならず韓国にも「金正恩(キム・ジョンウン)が核を放棄するなら、腹でも切る」という思い込みが野党や保守マスコミを中心に広範囲に根をおろしている。
交渉批判者たちは、最初は南北信頼回復を基にトランプ大統領を説得し、朝米直接交渉を引き出そうとする文在寅(ムン・ジェイン)大統領の努力を「純真で北朝鮮にだまされている」と非難した。そのうちに南北首脳会談を契機にトランプが朝米首脳会談に積極的な態度を見せるや、批判の焦点が変わった。今度は北朝鮮の“トリック”にもてあそばれるのがトランプになったためだ。その代わりに、シンガポールでの朝米首脳会談がそれなりに成功しても「北朝鮮の完全な非核化まで行くことは難しい。結局、朝米交渉は途中でこわれるだろう」と批判している。
交渉の終わりは誰にも分からない。しかし、金正恩・北朝鮮国務委員長の真正性と非核化意志を疑い続けて非難する人々が見逃していることが一つある。誰でも知っているように、朝米交渉の核心は「非核化と体制の安全保証の交換」だ。北朝鮮の「非核化の真正性」を疑うならば、米国が北朝鮮に対してする「安全保証の真正性」もまた疑ってみることができる。いくら米国が“良い国”だという信念を持っていようが、正確な展望のためには一回ぐらい北朝鮮の立場で「核を放棄するならば、米国の体制保証の約束はどうして担保できるだろうか」という質問を考えてみる必要がある。
「体制の安全保証」は、言葉や紙(宣言または協定)ですることで、「核放棄」は行動(核弾頭・大陸間弾道ミサイルの除去)ですることだ。冷静に見れば、行動よりは言葉の真正性を疑う方がさらに容易だ。北朝鮮の非核化の原則として“CVID”(Complete,Verifiable,Irreversible Dismantlement. 完全で検証可能で復元不能な廃棄)という用語をよく使うが、実際に“復元しやすい”(reversible)のは、行動ではなく言葉や文書だろうからだ。
しかも、米国が平壌(ピョンヤン)に連絡事務所を設置して、北朝鮮と不可侵条約を結ぶからといって「北朝鮮の体制の安全」が全て保証されるわけでもない。先日、北朝鮮は脱北者団体のビラ散布と、テ・ヨンホ元駐英公使の記者会見を問題視して、韓国政府を非難した。板門店(パンムンジョム)宣言に含まれた「相互敵対行為禁止」の精神に反したということだ。しかし「表現の自由」を重視する韓国政府としては、脱北者団体の活動やテ・ヨンホ氏の発言をむやみに禁止することは難しい。米国はそれ以上だろう。北朝鮮に対する不信が広範に広まっている今、ワシントンの雰囲気ではトランプが朝米交渉を成功裏に導いても、議会または民間次元で反北朝鮮活動が静まりはしないだろう。こうしたすべての負担を抱いて、北朝鮮が米国との協議にはいったという事実だけは評価しなければならない。
もちろん、かと言って北朝鮮の非核化意志を信じることができるかというのは別の問題だ。ただし、二つのことは明らかだ。まず、「金正恩は核を放棄しないだろう」という論理で北朝鮮の真意を絶えず疑って、朝米交渉を揺さぶるソウルとワシントンの強硬派の見解は公正でないという点だ。すべての交渉は、その終わりが見える時まで、いつでもこわれうるという不完全性を内包している。北朝鮮の真正性と同様に米国の北朝鮮に対する体制安全保証の約束もまた完全ではないことを理解するならば、双方が一定のリスクを甘受して交渉を推進することに反対する名分はない。
もう一つは、米国の「体制安全保証」にそのようにこだわって「段階的進展」を要求する北朝鮮の態度が、ごり押しではなくある程度は理解できる部分があるという点だ。トランプ行政府がパリ気候協約から脱退し、イラン核合意を簡単に破棄したことを見れば、国際社会との約束を破りうる国は世界に米国しかないだろう。
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Source: おもしろ韓国ニュース速報