1: 2018/08/05(日) 08:02:28.05 ID:CAP_USER

【コラム】日本の自営業にあって韓国にはない「天下一」精神

 2007年に日本で変わったメディア報道に接した。東京・池袋にあるラーメン店の話だ。

 46年間にわたりラーメンを作り続けた主人の足の調子が悪くなり、厨房に立ち続けることができず、閉店を決めたのだ。閉店当日には全国からラーメンファンが押し寄せた。数百人が店の前に並んだ。夕方を迎える前に400杯を完売した。主人が店を閉めようと出てきた。日本では廃業することを「暖簾を下ろす」という。ファン数百人はその光景を店の前で見守った。主人は暖簾を下ろして一礼した。ファンは「ありがとう!」と叫んだ。

 日本で接した二つのメディア報道が胸に残っている。一つは2011年の東日本大地震に関する報道だ。1万8000人が死亡し、原発が破壊されるという大惨事にもメディアは冷静だった。セウォル号事故当時の韓国メディアのように報じていたならば、日本はその時に崩壊していたのではないかと思う。もう一つがそのラーメン店の話だ。主人はラーメンを「世界最高の一杯」にするために生涯をささげた。健康を損ねて引退する彼に対し、メディアは惜しみない賛辞を送った。新聞は社会面トップで扱った。テレビ局はヘリコプターを飛ばし、店の前の行列を生中継した。

 主人は100人を超える弟子を育てた。弟子とは言っても、経済的地位は最低賃金を受け取る調理補助アルバイト以下だった。それでも彼らが独立を夢見て、主人のノウハウを学んだ。日本ではこの過程を「労働」ではなく「修業」と呼ぶ。主人は独立する弟子に「暖簾分け」を認めた。独立後に主人の商号を無償で使うことを認めたのだ。その主人は3年前に世を去ったが、彼が残した「大勝軒」という商号は数多くの暖簾の上で命をつないでいる。自営業が日本で進化する方式だ。

 10年前、東京での特派員生活後期を東京西部の小さな町内で過ごした。大規模商圏に挟まれ、通勤時間には急行が止まらない場所だ。そんなところに有名店が多かった。特にパン店はすごかった。創業70年を超えるパン店があり、天然酵母を使い、全国に名を馳せた店もあった。ある店は一人で焼いたパンが売り切れると店を閉めた。立て看板を片付けると自宅へと帰っていった。そこはチェーン店のパンよりも割高だったが、独創的だったからこそそれが可能だった。住民はその独創性に代価を払った。

鮮于鉦(ソンウ・ジョン)社会部長
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

2: 2018/08/05(日) 08:02:45.92 ID:CAP_USER

20年前に住んでいた東京・大田区にはロケットの上端部を作る小さな工場があった。社長と従業員十数人という町工場だった。大気圏を貫き、宇宙に飛び出すロケット上端部の微妙な曲面が工場経営者の匠の技で完成した。社長が大きな棒で曲面をならす手作業は原始的で印象に残った。その原始性には標準化できない技術の微妙さが隠れている。飲食店や製造業の生命線は大資本のカネでもまねできない独創性にある。

 丁酉再乱(慶長の役)の際に日本に連行された儒学者、姜沆が当時の日本について書いた「看羊録」にこんな一節がある。「日本はどんな才能、どんな物であっても必ず天下一を掲げる。壁塗り、屋根ふきなどにも天下一の肩書が付けば、多額の金銀が投じられるのは普通だ」というものだ。つまり、つまらない技にも「天下一」があり、それが認められると権威となり、報酬が支払われることを言っている。日本の自営業は400年以上、そうした土壌で成長した。そんな日本の自営業ですら、人口減少、高齢化、新世代の価値観変化で縮小しているという。

 韓国の自営業は日本に比べ深く根付いてはいない。ならばもっと関心を持って応援すべきだが、反対に向かっている。大規模資本の独占を非難しつつ、どんな分野でも大企業の商品を好む。首都圏の店舗賃料は日本を上回り、賃金も日本の水準に近づいた。資本、地主、政府が同時に自営業を攻撃する。こんな政府が自営業担当の秘書官を青瓦台(大統領府)に置くのだという。ポスト一つを設けることで、大企業やビルオーナーに矛先を向けるのではなく、最低賃金をまず韓国に適した水準に合わせるべきだ。

 それでも本質は実力だ。飲食店に行けば、主人の多くは調理場ではなくレジにいる。人気エリアには内装にばかり凝ったおしゃれな店が立ち並ぶ。町工場は独創性よりも低賃金に死活を懸ける。韓国の自営業には匠は少なく、経営者ばかりが多い。見下して言っているわけではない。相対的にそうだと言っているのだ。上の世代は日本に行けば、ソニーの電子製品を購入した。最近の世代が日本に行って感動するのは、日本の自営業がつくり出した小さな「天下一」だ。環境がいくら劣悪でも本質を無視してはならない。

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Source: おもしろ韓国ニュース速報