韓国与党議員が、北朝鮮に連行された民間人に対する法的名称を「拉北者」ではなく「失踪(しっそう)者」に変更すべきだとして法案を発議したことから、論議が高まっている。
辞書で見ると「拉北」は「北朝鮮に拉致された」という意味で、「失踪」は行方が分からず、どこに行ったかや生死が分からなくなった」という意味だ。名称を変更すれば、北朝鮮の拉致責任を消すことになる。拉北者(北朝鮮による拉致被害者)家族は「典型的な北朝鮮の論理を踏襲するものだ」と反発しており、物議を醸している。
与党・共に民主党の宋甲錫(ソン・ガプソク)議員=写真=は13日、「6・25戦争(朝鮮戦争)拉北被害真相究明および拉北被害者の名誉回復に関する法律」(6・25拉北者法)と「軍事休戦に関する協定締結以降の拉北被害者の補償および支援に関する法律」(戦後拉北者法)」改正案を代表発議した。
2010年に制定された「6・25拉北者法」は戦争中に北朝鮮に拉致された民間人の被害を集め、家族らの地位を国が確認し、名誉回復する根拠となる法律だ。07年に制定された「戦後拉北者法」は休戦協定(1953年7月27日)以降に発生した北朝鮮による強制拉致被害者の遺族や帰還した拉致被害者などを補償・支援する法律だ。
宋議員はこの2つの改正案を発議した理由について、「『拉北者』という表現は北朝鮮側が強い拒否感を示している単語なので、南北関係での衝突を和らげるための法的根拠を整えようというものだ。実際に閣僚級会談などの実務会談では『戦争時期とその後に消息が分からなくなった人』などのように遠回しな表現を使用している」と説明した。
この改正案が通過すれば、現行法から「拉北」という用語は消えることになる。現行法で「拉北」は「本人の意思に反して北朝鮮に強制的に抑留されたり居住したりすることになった者」となっており、北朝鮮側の責任が明確になっている。また、「6・25拉北者法」に基づいて昨年まで4777人が「拉北者」と認定されているほか、「戦後拉北者法」によっても425件が認定され、慰労金などとして145億ウォン(約14億円)が支給されている。
両改正案には同党の安圭佰(アン・ギュベク)国防委員長や李秀赫(イ・スヒョク)外交統一委員会与党幹事ら計12人が署名している。宋議員は全南大学総学生会会長や全国大学生代表者協議会(全大協)第4期議長を務めた元学生運動家だ。参与連帯運営委員や盧武鉉(ノ・ムヒョン)財団地域運営委員などとしても活動した。前回の大統領選挙で文在寅(ムン・ジェイン)大統領候補の秘書室副室長を務め、今年6月13日の統一地方選挙・国会議員補欠選挙において光州西区甲選挙区で当選した。
これについて今月14日、社団法人「6・25戦争拉北者家族協議会」は、宋議員を死者に対する名誉毀損(きそん)や国家保安法違反で大検察庁(最高検察庁)に告訴した。同協議会は記者会見で「北朝鮮は6・25戦争時の事件発生直後から現在まで一貫して拉致犯罪を否定し、『拉北者(abducteeまたはkidnapped people)』という用語ではなく、『失郷民(displaced civilian)』または『失踪者(missing)』という用語を意図的に使用している。(改正案を発議した宋議員は)一体、どこの国の国会議員なのかと言いたくなる」と述べた。同協議会のイ・ミイル理事長は「関連法案を今すぐ撤回し、10万人の戦時拉北者や遺族に謝罪し、国会議員の職を辞すべきだ」と言った。
(中略)
国会外交通商委員会の関係者は同日、「個人発議法案として今回の臨時国会や定期国会で推進する計画は今のところない」と述べた。統一部(省に相当)関係者も「(拉北者を)6・25戦時拉北者と規定している政府の見解に変わりはない。国会議員の意見に過ぎない」と話している。
ソン・ジョンミン記者 , ウォン・ウシク記者
ソース:朝鮮日報日本語版<北が嫌がる「拉致被害者」表現を「失踪者」に変更、韓国与党議員が法案発議>
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/08/17/2018081701102.html
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Source: おもしろ韓国ニュース速報